ギラン・バレー症候群からの回復のためにはリハビリが必要不可欠です。
また、リハビリの時間以外でも、積極的に自己トレーニングを行うことで、さらに回復が早まります。二年間の入院生活を振り返り、強くそう感じています。
一方で、過度のリハビリは避けるべきです。早く良くなりたいと思う余りに、無理なリハビリを続けてしまうと体調を崩したり、逆に体を痛めたりして、リハビリが滞ってしまいます。医師やリハビリスタッフの指導の下、適切なリハビリを継続して行って下さい。

そして、リハビリや自己トレーニングの成果を、できるところから積極的に日常生活に活かすようにして下さい。ご飯を食べる、歯を磨く、顔を洗う、着替える、トイレで用を足す、お風呂で体や頭を洗う、食堂や洗面台、トイレ、お風呂へ歩いて行く、そうした日常動作を毎日自分で行うことがギラン・バレー症候群からの回復には極めて大切です。毎日の生活そのものがリハビリだということを忘れないで下さい。



ギラン・バレー症候群で長期間体を動かせなくなった場合に、最も気を付けなければならないことの一つが拘縮(こうしゅく)です。拘縮とは関節が硬くなり、関節を動かせる範囲(可動域)が正常よりも狭くなることです。また、関節を動かすと、同時に筋肉や腱が伸び縮みしますが、体が動かせないとそれらの柔軟性も失われ(筋、腱の短縮)、さらに関節可動域が狭くなります。
普段はあまり意識しませんが、腕や足の関節が拘縮しないのは、日常動作の中でこれらの関節を常に動かしているからです。

運動神経が回復し、自分の意志で筋肉を動かせるようになっても、関節や筋肉が硬くなっている状態では、効果的な筋力回復のためのリハビリを行うことができません。

自分で体を動かせない期間は、まず第一にできる限り関節、筋肉、腱の柔軟性を保ち続けること(保ち続けるためのリハビリを行ってもらうこと)が大切なのです。



理学療法、作業療法、言語聴覚療法の三種類があり、それぞれ、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)が専門で行います。
私の場合、リハビリテーション病院転院後は毎日三種類のリハビリをそれぞれ一時間ずつ行いました。PTに足と体幹部、OTに腕のリハビリをそれぞれ担当してもらい、顔の筋肉、発声、嚥下(えんげ:食物を飲み下すこと)はSTに担当してもらいました。


私が入院中に行ったリハビリや自己トレーニングについて、体幹上腕前腕の五部位に分けて詳しくご紹介します。各ページをご覧になるには、模式図からそれぞれの部位をクリックして下さい。



治療が終わり、リハビリ病院への転院をお考えの患者様やご家族の方もいらっしゃると思います。ですが、どのような基準でリハビリ病院を選べば良いのかが分からない方も多いでしょう。
私の考える病院を選ぶ際の基準は、

・患者数に対してリハビリスタッフの人数が十分である。
 (目安はスタッフ一人あたり患者三人程度)
・担当者が休みでも、別のスタッフが代わりにリハビリを行ってくれる。
・リハビリのない日は日曜日だけである。
 (出来れば祝祭日もリハビリを行えるのが望ましい)
・リハビリスタッフが的確な自己トレーニングのメニューを考えてくれる。
・医師や看護師を含め、病院全体が自己トレーニングに協力的である。




の五つです。
要するに、その病院でどれだけ濃密にリハビリと自己トレーニングができるのか、ということが重要なのです。私の入院していた病院はこれらの基準を全て満たしていました。患者様によってはそのような病院がお近くにないかもしれませんが、その中でできる限り濃密なリハビリが受けられる病院をお選びいただければと思います。ご家族の献身的なご協力が得られる場合には、自宅から通いやすいこと、担当スタッフが家族にもできるリハビリ手技を指導してくれることなども考慮すべき点だと思います。
また、看護師が「日常生活そのものがリハビリである」という意識を持っていることも重要だと思います。例えば、介助すれば歩ける状態の患者に対しては、時間と手間がかかっても看護師がトイレや食堂まで付き添って歩いてくれる。こうした看護師の協力が得られる病院では歩行だけでなく、あらゆる生活動作を自分で行うことが習慣化しやすく、よりスムーズな回復につながっていくと思います。

以上をご参考頂き、患者様に最も適したリハビリ病院を選んでいただきたいと思います。



私は入院中、その時の回復状況に合わせたリハビリや自己トレーニングを行っていたつもりですが、それでも筋肉の疲労感を感じることや、時に筋肉痛になることもありました。そうした際は決して無理をせず、負荷を軽くしたり、ストレッチを主体としたメニューに変えたりしていました。そして、疲労感や筋肉痛が治まってから通常のメニューを再開していました。
ギラン・バレー症候群では、筋肉痛になる程のリハビリは逆に運動神経の回復を妨げるため、避けた方が良いと考えられているようです。ですが、私はリハビリを行っている中で、筋肉痛になって回復が遅れたと感じたことは一度もありませんでした。むしろ、運動神経が回復しているからこそ、筋肉痛になる程のリハビリができる、という印象を持っています。

「回復状況に合った負荷をかけ、筋肉痛になったら休息をとる」

健康な人の筋力トレーニングと同様、これを繰り返すことがスムーズな筋力回復につながると思います。

もちろん、回復状況を無視して必要以上に大きな負荷をかけたり、筋肉痛にも関わらずリハビリを続行することは避けるべきです。また、どのようなリハビリが良いのかというのは患者様の症状などによって異なると思います。経過を慎重に観察し、医師や担当スタッフと相談しながら、患者様に最も合った内容のリハビリを行って下さい。